名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方

名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方 (日経ビジネス文庫)

“いい文章”、“読ませる文章”は誰でも書ける

あなたがメール、手紙、レポート、報告書などの実用文を受け取った時、ハッとさせられる、物事を的確に言い表している、ウンウンと共感できるものがある一方、意味が分からない、だからどうした、冗長で読む気にならないと感じるものも多いはずだ。しかし、いざ書き手になってみると、“読ませる文章”などなかなか書けるもんじゃない。これは生まれつきのセンスの問題なのか。パソコンに向かっていると、そう感じることがある。

そんな僕の悩みに応えてくれたのが本書だ。著者は、第一線のコピーライターである社会人1年目が読むような、最低限の文章表現とマナーの本ばかりで困っていたところ、応用が効き、それでいて事例を交えて誰にでも分かる方法論を扱う本書は貴重だ。情報」、「整理」、「表現」の3つの構造でまとめ直して紹介してみたい。

noun_27461

「情報」:読んでもらいたいという衝動を溜めこむ

何よりも大事なのは、実用文は読者が「トク」してはじめて読んでもらえるということ。しかし、僕ら素人がやりがちなのは、集めやすい情報から言えそうなことをまとめること。これをやると、何となく格好は整うが、読者が本当に知りたい示唆には絶対に辿り着けない。戦略コンサルティングも全く同じで、僕も過去痛い思いをしたものだ。

著者は、コピーの依頼があると会議の時間を延長してでも、“是非教えたい”と思わず膝を叩きたくなる読者への「お土産」となるネタをクライアントから聞き出すという。

文章にして「これはぜひ読者に読んでもらいたい話だ」「仲間たちに伝えたい話だ」「ユーザーの方々に知ってほしい話だ」という思いの高まりに到達します。その思いの高まりがエネルギーになるのです。書くのはそれからです。

 

「整理」:人と同じことを思い、人と違うことを考える

誰もが“これは!”というネタは、そのまま書き出せば、それだけで十分面白いものができる。波乱万丈の人生、苦労の末の商品開発、老舗ブランドの意外な創業エピソードが典型だ。こんなネタに巡りあえたら、凝った調理はやめて、素材の旨みを伝える整理に徹したい。しかし、ほとんどのネタは、磨かないと光らない原石の状態で転がっているものだ。

著者は、原石を光らせる視点として「人と同じことを思い 人と違うことを考えよ」と強調する。世の中のみんなが何を感じているのかをよく知る。“だから”、みんなとちょっと違う考えで物事を整理することができるというわけだ。整理の引き出しは経験を積めば増える。しかし、年賀状の事例で紹介されている通り、年賀ハガキを手に、「これでなにができるのだろう、なにができないのだろう、ここに人はなにを、どういう気持ちで書くのだろう、受け取った人はなにを読み、なにを感じるのだろう」と、誰でもできる想像をどれだけ根気よく続けたかで、5年後の引き出しの量・質は大きく変わる。

 

「表現」:必須条件の説明力と、大切にしたい伝え手のココロ

さて、ここまでをきっちりやった上で、ようやく文章を書くところ(「表現」)までたどり着く。「表現」というとそれこそセンスの世界のようだが、著者は「表現」の原点である「説明」から始める。ともかく、その商品の他との違いを、平たい言葉や、数字や図も積極的に使って、しっかり書く。これで少なくとも最低条件はクリアできる。

後はどこまでブラッシュアップできるかの勝負だ。ブラッシュアップのポイントには、“テクニック”と“伝え手のココロ”の2つがある。テクニックについては、文章をどう削るか、フォントやオブジェクトはどう使うか読み手の納得感をどう高めるかシンプル=単調な文章をどうヒトヒネリするかなど、本書で紹介される数々の事例を読み込み、自分で書いてみることで徐々に身につけられる材料は散りばめられている。

2つめの伝え手のココロは、あなたの“伝えたい!”という思いさえあれば、すぐに実践できる。

長文であっても、文章そのものが楽しく、最後まで読ませる魅力があります。電話のお辞儀のように、書き手が笑顔で一生懸命話そうとしている顔が見える文章です。



この本についてひとこと